堺雅人 要潤 映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』インタビュー
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テレビドラマに続く映画でその世界観を描き切る、今冬の注目作『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』がいよいよ公開される。野心にあふれ、どこか秘めたものを感じさせる右衛門佐を圧倒的な存在感で魅せた堺雅人、愛に盲目に生きる伝兵衛を演じた要潤。それぞれに作品に込めた想いを聞いた。
現代のいろいろな部分を映す鏡になっている
──連ドラ+映画という壮大なプロジェクトへの主演となりましたが、どういったお気持ちで出演を決めたのでしょうか。
【堺】 出させていただけるという喜びはもちろんありましたが、それ以上に大丈夫かなという不安もありましたね(笑)。原作の熱烈なファンは多いでしょうから、もし期待を裏切るようなことになったら大変だなと思っていました。1割くらいうれしい気持ちもありましたけど、残り9割は責任の重さを感じて「まいったなあ」という気持ちでしたね。僕自身も原作のファンですから。
──右衛門佐という野心にあふれた役柄を演じていますが、どんな人間だと感じていましたか?
【堺】 人物としてはわかりやすいと思っていました。出世欲とか、周りに認められたい気持ちとか。もちろん、大奥という特殊な環境におかれているので、まどろっこしい行動をとったりするんですけど、動機はシンプルなものだったんじゃないかと。
──右衛門佐は情熱的な部分を持ちながらも冷静。その芯の強さはどこに由来するものなんでしょうか。
【堺】 ひとつには、右衛門佐には江戸に対しての京都のプライドがあったんじゃないでしょうか。右衛門佐は、貧しいとはいえ公家の人間ですから。心のどこかで武家を見下していたのかもしれませんね。
──物語の設定である男女逆転というのは、ある種現代を風刺しているような印象もありますよね。
【堺】 僕もそう思いました。男女の立場が逆転することで、現代のいろいろな部分を映す鏡になっているのかなと。“男らしさ”から“優しさ”へ移っていった現代と江戸時代。照らし合わせながらいろいろな読み方ができるおもしろい物語ですよね。それに、これだけ長期にわたって大掛かりな作品に携わらせていただけるのも、本当にありがたかったです。制作費も相当かかっていますし(笑)、贅沢な気持ちでやらせていただきました。
「男とは」「女とは」を考えさせられる
──堺さんご自身はもともと歴史がお好きなんですよね。
【堺】 歴史について書かれた本を読むのは好きですね。歴史の授業も好きでした。役者の仕事って、そのおもしろさのひとつに変身願望があると思うんです。そういう意味では、時代劇はすごく遠い場所へ連れて行ってくれる、とてもありがたいものですね。まあ、冬の京都での撮影はかなり寒かったですが(笑)。でも、右衛門佐って心に何かを秘めているような役なので、寒さを我慢しているくらいがちょうどよかったのかもしれない(笑)。
──美しい景色や貴重な建造物をスクリーンで観られるのも、今作の魅力のひとつですね。
【堺】 普段あまり撮影で使わせてもらえないような場所にも入らせてもらえたりしました。例えば今回、聖護院のシーンは印象的でしたね。いつもは護摩を焚いてお祈りをしている庭で、大勢の男達が綱吉(菅野美穂)に踊りを披露するんです。京都ならではの、ぜいたくなロケーションでした。
──印象深い撮影シーンなどはありますか?
【堺】 今作は綱吉の物語なので、菅野さんの演技は最初から最後まで大事な共演者としてとくに意識して見ていました。ただ、共演した全員がすばらしい役者さんばかりだったので、どのシーンも印象深いです。
──原作者のよしながふみさんともお話しする機会があったんですよね。
【堺】 そうですね。この作品の話を何度かさせていただきました。物語の読み手として純粋に、「どういうところから着想を得たんですか?」とか「右衛門佐のモデルはいるんですか?」といったようなことを聞いたような気がします。でも、それが演技にどう役に立ったかは、まったく覚えてないんですよ。会話がすごくおもしろい方なので、笑っているうちにおしゃべりが終わってしまった(笑)。
──楽しそう(笑)。ちなみにどんなお話だったんですか?
【堺】 言えないです、それは(笑)。いや、楽しすぎて忘れてしまいました。
──様々な要素が詰まった作品なので短く語るのは難しいのですが、最後に作品の観てほしいポイントを教えていただけますか。
【堺】 男女が逆転することによって、「男とは」「女とは」と考えさせられる作品になっていると思います。逆転している話なんだけれど、すごくまっとうな時代劇になったなと、完成した作品を観て改めて感じました。時代劇が好きな方も、原作が好きな方も、みなさん楽しんでいただけると思います。ドラマを見逃した方でもきっと存分に堪能できるので、ぜひ多くの方に足を運んでいただきたいですね。
(文:奥浜有冴/撮り下ろし写真:逢坂 聡)
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